2014_whatキリスト教とはなにか?
-ヨハネ書簡に徹して聴く-山口勝政 著

書評:櫛田節夫氏
(西日本宣教学院教師、高松コミュニティチャーチ教師)

真正な聖書観に立つ牧師によって、強い確信と深い慰めを与えてくれる、何と見事な講解説教が生み出されたことでしょうか。

著者山口勝政師は、1992年日本福音キリスト教会連合設立以来、筆者の友人です。その学識の豊かさと真摯にみことばと向き合う堅実な奉仕の姿勢には絶えず敬意を覚えてきました。著者は殊に日本の保守的な地方での宣教の突破に重荷を持ち数名の教職の方々とシンポジュウム「地方伝道を考える-自立と連帯-」の委員会を立ち上げ、過去約15年間にほぼ毎年東北から中四国までどこかでシンポジュウムを開催してこられました。筆者も委員のひとりに加えていただいています。

本書は茨城県の保守的な地域での著者自身の牧会する教会で2011年11月から2012年5月まで日曜毎の礼拝で語られてきた20回の講解説教に一部手を入れたものです。著者が「キリスト教とは何か?」を明らかにするために「ヨハネ書簡に徹して聴く」と記すとおりまさに真剣にヨハネ書簡のことばに精魂を傾けて取り組んだ結果生み出された説教です。一回の説教は7,000字前後で、毎週これだけの明解さと深さを兼ね備えたメッセージを愛する教会員と求道者に取り継いでこられた著者の真実さと有能さは衝撃的でさえあります。

著者はまず「はしがき」で自分の説教のスタンスを明示し、今日のキリスト教の危険な動向を察知し、それによって以下の20回のメッセージの特徴と主張と方向性を明らかにします。そして「本書簡の目的は信徒に信仰の確信を与えるために書かれたものです。」と中心テーマを明示します。とりわけケリントスに代表されるグノーシスの偽りの教えと真の福音の違いを際立たせ、それによって福音の真理を浮き彫りにしてくれます(これは第一説教以下本書全体を貫いています)。

本書の特徴は、著者の原語の熟錬した運用、聖書箇所の適切な引用、明せきな識別力による正確な揺るぎのない釈義がなされていることです。聖書のみことばが網の目のように繋がってメッセージ全体が躍動しています。その結果説教全体が確信に満ちています。著者が「あとがき」でボイス師の聖書講解書につき語っておられることがそのまま本書に当てはまるように思われます。「分りやすさ、その読みの深さ、現状分析の鋭さ、適用の的確さ」です。さらにその迫力です。

またアウトラインが明解で区分の前後の繋がりがすっきりしており、説教の展開が分りやすく、読み進めていくうちに『そうか、そうだったのか』と納得がいき,気がつけば次々と前に進んでいる自分に気づき驚きです。私たちの心の深い必要に届きまた分りやすいのです。といっても安易に流れず、難解な箇所から逃げず、緻密に研究し何とか正確な釈義を見出しています(著者使用の註解書も世界的著名な学者たち―J.M.ボイスを主として用い,他にJ.W.R.ストット,F.F.ブルース、B.F.ウエスコット他を参照―によるものです)。例えば、「罪を犯すこと」と「クリスチャンは罪を犯すことがない」。この一見矛盾に見える箇所を7回の様々な角度から検討ししっかりした釈義に到達します(第九説教)。「世」には異なった3つの意味の区別を示され納得させられます(第六説教)。こうしたことが数多く豊かに示されます。

どの説教も味わい深く読み応えがありますが、筆者がとりわけ慰めと励ましを受けたのは、第一説教「キリスト教とは何か」(Ⅰヨハネ一1-4)、第二説教「イエス・キリストの知らせ」(Ⅰヨハネ一5-10)、第三説教「きよめへの招き」(Ⅰヨハネ二1-2)、第六説教「教会と世」(Ⅰヨハネ二12-17)、第七説教「教理的テスト―真理を知る」(Ⅰヨハネ二18-27),第十三説教「互いに愛し合いなさい」(Ⅰヨハネ四7-21)、第十四説教「義と愛と真理と」(Ⅰヨハネ五1-5)、第十六説教「祈りを聞かれる神」(Ⅰヨハネ五14-17)、です。

日本の福音陣営の中から、世界の神学の危機的な動向をしっかり見張り、聖書の無誤性の確信に堅く立ち(「閉塞感からの脱却―日本宣教神学」山口勝政著162-178頁参照)、これだけの講解説教を生み出されたのは著者が牧会44年の長年の絶えない祈りと学びと苦闘の蓄積をしてこられたからでしょう。著者の愛読書がトーマス・ワトソン、C.H.スポルジョン、マーティン・ロイドジョーンズ、ジェームス・ボイス(殊にここ25年ほど同師の説教を基本に説教してこられたこと)、田中剛二であるところからその影響を受け、堅実さと厚みと鋭さを兼ね備えた滋味溢れる説教で聴衆への熱情と愛が伝わってきます。本書の出版を心から感謝します。

説教者たちや十字架の絵などの写真が適度に配置されており、字配りにも字の大小に適切に変化をつけ、余白も適当に取られており、大変読みやすくなっています。

自分の信仰にいまひとつ確信を持てない方々は確かな確信の拠り所をいただけるでしょう。信仰の豊かな養いを望んでおられる方々は自分の信仰のあり方の再点検を迫られるでしょう。講解説教の具体的な見本と励ましを望む牧師・神学生の方々は御力と御霊の導きをもとめて更に真剣に説教の取り組みへの挑戦を受けることでしょう。ぜひ本書のご一読をお勧めします。